産前・産後に関するトラブルについて、
保健師・看護師・産後ケア講師の松山くみが
産後のプロフェッショナル目線でコラムを連載してきます!
※毎月更新予定
◎母になったからこそ重要視してほしい“0次予防”
私たち保健師や医療従事者は、公衆衛生の中では「予防」という分野に力を入れています。
大きくは、1~3次予防に分けられ、
- 1次予防:危険因子のコントロール(疾患の予防)
- 2次予防:疾患の早期発見・早期治療(悪化の予防)
- 3次予防:治療、リハビリ、再発防止(再発の予防)
私が地域保健に携わっている頃は、(1次予防)のところに力を入れていたと思います。
しかし、最近産業看護師の先輩との会話の中で
「私たちは、(0次予防)に力も入れたい!」
その時とても新鮮な思いに触れました。
0次予防とは:ヘルスプロモーションの考えに基づいており、自分の体質を知り、病気の予防を推進
「0次予防」とは、一人ひとりの体質に合わせて生活習慣などの改善を行い、病気の予防を推進するという考え方で、自分が親から受け継いだ遺伝子などを調べて、「どのような病気になりやすい体質なのか」を知ることで、効果的に生活習慣を見直すことを目指しています。「0次予防」のためには、どのような人がどんな環境でどんな病気になりやすいかを長年にわたり調べる必要があります。 「0次予防」の実現に向けた取組みは、子や孫の世代(将来世代)に花開く健康づくりです。(特定非営利活動法人 健康づくり0次クラブより)
ざっくりいうと、0次予防は、
「健康づくりの行動を助ける環境づくり」の部分をいうのではないでしょうか。
◎母になったからこそ、0次予防に務めたい
子どもができると、ママ自身が自分のケアにかける時間は減ります。
実際、不調があったとしても「我慢」している人が多いのではないでしょうか。自宅で寝ている、市販の薬で不調が収まるようにしている、または病院を先延ばしにしているってことが考えられます。
育児や家事、仕事との両立で忙しい女性こそ、自分のことは二の次!にしてはいけません。
特に女性が活躍する時代へと変化しているが、「時間がない」を理由に自分の身体のことには目を向けにくいのが現状で、実際健診や検診の受診率は低いままです。
日本人の月あたりの平均医療費(患者負担と保険給付を足したもの)は2.6万円です。(2014年厚生労働省より)
また将来、介護が必要なとなり介護付き老人ホーム(民間)に入るとなると、
15000円~30000円/月かかるとも言われていますし、初期費用もかなりの高額です。
ますます、今後高齢化社会になることを考えると条件は厳しくなり介護の状況も負担も厳しいことはわかっています。
母になり、子育てがひと段落する頃には親の介護状況。
子育てが落ち着けば、自分のケアを考えている、「若いから大丈夫」っていうのも時間の問題です。
母になったら、0次予防が重要視される時代になるのではないでしょうか。
- 出産したら、ケアを受けられるようなサービスを会社が準備する
- ママの健康に過ごすために、家族が応援してくれる
- 地域のママたちの協力が得られるような環境を作る
このような環境づくりから取り組んでいく必要があります。
◎ 産後ケアも0次予防の考えから
母親がするべきことは育児、妊娠出産は病気ではないなどなど、女性が家庭を守るそんな役割はまだまだ根強く残っています。しかし社会は、「女性の活躍推進」を取り上げ、働くことを社会全体が応援しようとしています。
そんな時代変化から、女性の心身に及ぼす負担は、担う役割が多様化するからこそ大きくなるのではないでしょうか?
女性が健康に、育児も家事も仕事も担える3立ができるようにするためには、社会全体が住む地域全体で考えていかなくてはいけません。
平成26年に厚生労働省から「妊娠・出産支援事業」がスタートしていますが、まだまだ一人一人には十分届いていないのが現状です。これから、高齢出産も増え、心身のトラブル増えることも想定されます。そして地域全体では、産後うつ・虐待ケースも増えることも想定されます。
住む地域全体で、切れ目のない女性支援・子育て支援は今後もっと必要であり、健康支援は欠かせなくなるでしょう。
以上のようなことから、「まちの保健室」事業は発展させて行くべきではないかな?とも考えています。